JAとして全国初導入。
県作況指数95の中、収量20%増を達成!23年度の異常高温下で1等米比率73%の事例も(県の同比率16%)

JAにいがた岩船
山田 さん
時田 さん
近 さん
山田 さん、時田 さん、近 さん

お客様プロフィール

紹介する機能 生育マップ・地力マップ
地域 新潟県
栽培作物
栽培面積・圃場数 水田耕地面積:5,755ha
水稲作付面積:4,798ha
農業者数 3,187人

各地域の抱える課題に即した的確な営農指導を実現するために、ザルビオを導入

ーーJAにいがた岩船様がザルビオを導入された経緯についてお聞かせください。

山田様:以前、私が担当している地域で農業を営んでいらっしゃる上関ふぁーむを訪問した際、代表の伊藤さんから「すごく面白いサービスを見つけたよ!」と紹介してもらったのがザルビオだったんです。
「このサービスを担い手の方々に推進していったら、作物の品質や収穫量の向上につながるのではないか」と思い、上長に相談をしたところ、「こんな良いサービスはJAで一括導入して取り組んでいくべきだ」と言われ、担い手さん一軒一軒に導入を勧めるのではなく、JAにいがた岩船の管内一帯の圃場データをザルビオに登録して営農指導に活用するという形で導入することになりました。

ーーザルビオを導入するまで、JAにいがた岩船さんにはどんな課題があったのでしょうか。

近様:私の担当している荒川地区には、砂地が多くて肥料がうまく効きづらいという特徴があります。そのため、肥料をどれだけあげるとどれだけ吸収し、収量アップや品質向上につながるのか肥料効率に気を遣わなければならないことが課題でした。さらに、「だしの風」という山から平野に強風が吹き下りる地域でもあるので、植えた苗が綺麗に育たなかったり、生育が停滞してしまったりというのも課題のひとつですね。
時田様:私の担当は関川地区というエリアなのですが、この地区は山間部や中山間部に圃場があり、区画が小さく収量がなかなか上がらないという課題がありました。また、日本の中でも特に担い手さんの高齢化率が高い地域でもあります。そのため、ザルビオの地力マップを活用することで、平均的な収量を上げていくことができるのではないかという期待感は抱いていましたね。

ーー地区によって抱えている課題が異なるのですね。

山田様:荒川地区は品質を、関川地区は収量を気にしなければならないという課題をそれぞれ抱えている中で、双方の課題を解決するには、圃場をきめ細かく管理していかなければなりません。しかし、すべての圃場を我々で巡回するというのは不可能に近いため、ザルビオの地力マップや生育ステージ予測機能などを活用して管内全体の管理をすることができれば、的確かつ効率的な営農指導が実現できそうだと感じたのが導入の決め手でした。
また、JAにいがた岩船の内部的事情としては、稲作の中核的な営農指導員が退職し、若手や新人の営農指導員が後任として担当地区に配属された際、経験値不足ゆえに指導ができないという課題を抱えていました。そのため、ザルビオを導入することで、より早く営農指導員として独り立ちができるようになるのではないか…というねらいもありました。

導入1年目で収穫量に劇的な変化

ーーザルビオを導入したことで、営農指導にはどのような変化があったのでしょうか。

近様:これまでは、営農指導員は穂肥の時期になると各圃場を周り、SPADという機械を使って葉色で測って生育状況を判断した上で穂肥のタイミングをアドバイスしていましたが、正直なところ指導員の感覚頼りという側面が大きかったんですよね。
時田様:ザルビオを導入したことで、生育マップを見れば生育の良いところ・悪いところを勘で判断するのではなく、大まかに可視化できるようになったのは非常に良い変化でした。
今年は穂肥の時期からザルビオの本格導入をスタートしましたが、2年目以降は生育ステージ予測機能を活用して中干しのタイミングの指導などにも活用したいと思っています。

ーー担い手のみなさんの反応はいかがでしたか?

時田様:今まで追肥の指導をしても対応を渋っていたような方々が、ザルビオの生育マップを見せながら指導をしたら話を聞いてくださるようになりました。はじめは「何なんこれ、当たってるん?」と半信半疑の様子でしたが、マップに表示されている圃場の全体のムラと自身の目で見た田んぼの様子を比較して、「この辺りの生育が足りていないと思っていたけどやっぱりそうなんだ」と納得感があったようです。

山田様:私の体感では、小規模の農家さんほどザルビオへの反応は良かったですね。田んぼの様子に目が行き届いているからこそ、生育マップをご覧になったときに「結構当たってるから他のももっと見せてよ」と食いついてくださいました。
さらに、ザルビオで生育状況や地力が可視化されたことで、稲作に対する担い手のみなさんの意欲も上がっているように感じています。

ーー管内の作物の収穫量や品質にも変化はあったのでしょうか。

時田様:ザルビオを導入した初年度である2023年は、タブレットを常に持ち歩いて追肥の指導をする方針に転換した結果、圃場1枚1枚で肥料の散布の仕方を変えるという指導ができるようになりました。その結果、作況指数が96だった令和3年と比較すると121.9%、98だった令和4年と比較すると117.4%、実出荷の数量が向上していました。北陸農政局さんによると、令和5年の作況指数は前年度、全然年度よりも悪いとのことだったので、ザルビオの効果はとても大きかったのではないかと思います(令和5年の作況指数確定値は95)。
山田様:全生産者というわけではないのですが、生育ステージ予測を活用し適期作業を実施した一発肥料の特性を最大限生かし、品質面で言えば、2023年は異常高温化や渇水といった環境条件下で、一等米比率が全般的に低かった(新潟県の一等米比率は16%)。そのような中で、ある生産者様は生育ステージ予測を活用して適期作業をすることで、一発肥料の特性を最大限に活かして一等米比率73.2%を確保した等の事例も出てきています。

生育マップに基づく営農指導が、担い手との信頼関係構築の一助に

ーーもうひとつの課題であった「若手営農指導員の育成」については、ザルビオ導入によって何か良い変化はありましたか?

山田様:若手の営農指導員が担当地区に配属され、担い手さんに顔を覚えてもらい、「こいつは信頼に値する人間だ」と認識していただいた上で指導ができるようになるまでに、これまでは私の体感で約5年はかかっていました。しかし、ザルビオを営農指導に活用すれば、約3年で独り立ちができるようになるのではないかと思っています。

ーーザルビオの生育マップを見ながら「ここの辺りに何か問題はありませんか?」とピンポイントで指摘できれば、担い手のみなさんからの信頼も得られそうですよね。

山田様:おっしゃる通りです。2023年から約1年利用させてもらった結果、地力マップの精度についてはおおよそ当たっているよねという意見が生産者の方からも多くて。「これは全然使えない」という方は1人もいなかったんです。なので、まずは新人の営農指導員であっても、まずは地力マップを見せに行くことで信頼関係構築の足掛かりにしていくというのが今後は重要になってくるのではないかなと思います。

今後はさらにザルビオをスマート農業に活用し、地域全体の収量・品質アップを目指したい

ーー今後の岩船地域の農業の展望や目標があればぜひお聞かせください。

近様:まず、大規模生産者さんや法人組織については、各自がザルビオのユーザーになっている状態を目指していきたいと思っています。圃場を自身のアカウントで管理しつつ、アドバイスを受けたいときにはJAの営農指導員にリモートで連絡してスマート農業を実施する、というイメージですね。荒川地区と関川地区には現在約2,000haの水稲面積があるのですが、そのうち約300haほどはすでに有料ユーザーになる予定で、着々と目標に近づいています。

ーー小規模生産者さんや高齢の担い手さんに対しては、どういった対応を検討されていますか?

近様:ご高齢の方やスマートフォン・パソコンを持っていない方には、JAが一括購入したザルビオを営農指導員と一緒に使いながら稲作をしてもらえればと思っています。そうすることで、地域全体の米の収穫量も品質も上がっていくと期待しています。
山田様:また、均一に施肥・追肥をするためにザルビオに連動する自動ドローンの実証も進めていきたいです。上関ふぁーむさんのところで実施されたときには十分効果があったようなので、管内の他の圃場でも導入できるといいなと思います。